挑発的な広告を繰り返し消費者からの抗議が殺到した
ブランド広告の表現にこだわりすぎて最早芸術家になった男
はたして一刀中旬から始まった死刑囚二六人を起用したベネトンの広告に、殺人者を不当に讃えているという抗議が殺到した。クレジットカードの解約や不買運動が一部で起きた。死刑囚の写真を実名や罪状入りで広告に使ったわけだが、ベネトン側は「死刑に対する問題意識の喚起が目的だ」と言う。この広告を見た一般の人々からも、死刑囚に殺害された被害者の遺族からも、死刑囚の家族からさえも、抗議の声があがった。そして死刑囚の撮影を許可した監獄の看守は、「死刑囚の写真を広告に載せるとは聞いていない、トスカー二にだまされた」と息巻いた。
まさに四面楚歌の状態に追い込まれた。話題性を追いかけるトスカー二は、例によって普通以上の刺激を求めた。でも今度は人権まで巻き込んでしまったのである。コビーライターのリチャード・カーの言う黄金のルールとは、「他の人からされたくないことを、他の人にもしないこと」である。これは人権をも含めた人間らしく振る舞うためのガイドラインとも言える。トスカー二は、このガイドラインを侵してしまったのだ。
ここまで追いつめられたら、ベネトンはついにトスカー二と手を切らざるを得なくなった。ベネトン様日本からの質問です。日本でもトスカー二との契約打ち切りのニュースは小さな波紋を呼んでいます。私はいつかこの訣別の日が来ることを予想していました。それは一九九三年、トスカー二がベネトンの広告に男女の性器をかわりばんこに並べたてたときからです。彼は、この性器を扱った広告が、ヴェネチア・ビエンナーレで展示されたと大喜びしていました。
社会派ということとビジュアリストである点イメージにのみ気を配ったナイキナイキは靴のメーカーであることにはまるで関心がない。靴の製造などくだらないと常々広言している。ブランドが伝統的に興味を示してきた品質には無関心で、イメージばかりに関心を持ち続けている。その点でナイキはまさしくイメージ・メーカーなのである。
マイケル・ジョーダン、チャールズ・バークレー、マイケル・ジョンソン、タイガー・ウッズなどのスーパースター総出演によるCMなど、スポーツイメージそのものになることがナイキの持ち続けてきた戦略である。もはや、ナイキはシンボルマークであるスウォッシュのイメージを広げる広告会社になってしまった。ブランドとは商品のことではなく、消費者の心のなかにつくられるイメージだから、而倒なものづくりにはかかわらず、イメージづくりにばかり奔走したのである。
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